このページではこのような疑問に答えていきます。
こんにちは、フリーランスデザイナーの ぬえです(@deepspaceout12)
この記事に来てくれたあなたは、「デザイナーに向いてないかもしれない」と感じながらも、「デザイナーであり続けたい」と願っている人だと思います。
きっとデザインが好きだからですよね。そうでなくても、デザイナーであり続けたい理由があるんだと思います。
「デザイナーを辞めたい!」という気持は分かります。私はデザインの仕事が辛すぎて一度心と体を壊し、デザイナーを辞めていた時期があります。その間まったく違う業種で働きながら、「やっぱりデザインが好きだ」と気づき、この業界に戻ってきました。
その時期に考えたことや今思う事などを交えながら、今「デザイナーを辞めたい」と悩んでいるあなたへ贈りたい言葉を書きました。
目次
デザイナーに向いていないかもと感じる理由3つ
理由は大きく分けて以下の3です。
- 理想と現実のギャップが大きいから
- 自分はセンスがないと勘違いしているから
- デザイナーは作家だと考えているから
それぞれ解説していきます。
【理由①】理想と現実のギャップが大きいから
- 華やかな職場
- 華やかな仕事
しかしどうでしょう。デザイナーとして働いている方は分かると思いますが、実際はとても「地味」じゃないですか?
デザイナーとして長く働いていれば、当時描いていた「華やかな仕事」が舞い込んでくることもありますが、基本的には自分の実力を発揮できる仕事にはなかなか恵まれません。
そういう華やかな理想と現実のギャップに大きな溝ができすぎると、次第にモチベーションも下がり、「あれ、私がやりたかったことってこれなの?」と考えるようになります。
【理由②】自分にはセンスがないと勘違いしている
- かっこいいデザインが作れる人がセンスがあるのでしょうか?
- 地味なデザインしか作れない人はセンスがないのでしょうか?
答えはどちらも不正解です。
“センス”とは、特別な人に備わった才能ではない。 それは、さまざまな知識を蓄積することにより「物事を最適化する能力」であり、誰もが等しく持っている。
センスは知識からはじまる | 水野 学
センスは決して生まれついたものではありません。ありとあらゆる分野の知識の積み重ねが、「物事を最適化する能力」となり、センスとなるのです。
であるならば、知識を増やせばセンスを磨くことは可能だと言えます。
【理由③】デザイナーは作家だと考えているから
多くのデザイナーが、デザインに対して以下のような理想を抱きがちです。
- かっこいいデザインをするのがデザイナー
- スタイリッシュなデザインをするのがデザイナー
結論から言えば、これは間違っています。
広告には「自分はこういうものが作りたい!」という気持ちを入れ込むべきではありません。広告とは、何かを伝える目的を持ったものだからです。
いえ違います。そのポスターをデザインしたデザイナーは、相手の気持ちを想像することを徹底的に深堀しています。
デザインは相手の気持ちを想像することから始まります。このことからわかるように、広告にとって大事なのは創造ではなく、整理整頓なのです。
デザイナーになりたての人は特に、創造を重視しがちです。「もっとかっこよいデザインを」「もっとスタイリッシュなデザインを」といった感じですね。
「デザイナーに向いていないかも」を乗り越えるにはどうすればいいか?(具体的な方法)
さて、ここまで読んでくれているあなたは、「理由は分かったけど、でもデザイナーを辞めたくない..!」と考えていると思います。
これからもデザイナーである自分に自信を持つためは、まずあなたが抱いているであろう理想と現実のギャップを埋める必要があります。では、具体的にはどうすればいいのでしょうか?
- 理想と現実のギャップをなくす
- センスの本当の意味を理解する
- 自己分析をする
順に解説しますね。
【解説①】理想と現実のギャップをなくす
理想と現実のギャップの大きな溝を埋めるのに一番いい方法は、「心の葛藤」を言語化することです。
理想「葛西薫さんのような、シンプルで美しいデザインができるようになりたい」
理想「原 研哉 さんのような、余白を生かしたデザインができるようになりたい」
現実「美しさを追求するといつもダサくなってしまう」
現実「自分がかっこいいと思ったデザインを、他人からはダサいといわれる」
こうして文字として明らかにしてみると、今の自分自身を多角的に見ることができます。
自分自身を多角的に見るメリットは大きく分けて2つあります。それが以下です。
- 「ここは頑張っているな」と自分を認めるようになる。
- 「ここはできているから、次はここを意識するか」と客観的な発想ができるようになる。
【解説②】センスの本当の意味を理解する
私が尊敬しているデザイナーの水野学さんは「「センスがない」は言いわけにすぎない」と切り捨てています。そして「センスは磨けるものだ」と続けました。
デザイナーになったばかりの時期は、知識が浅くて当たり前です。色々経験しながら、平行して必要と思われる知識量を増やしていけばいいんです。
ちなみに水野学さんは、「知識を増やす方法」として以下のように語っています。
知識を増やしていくこと、これに尽きると思います。といっても、漠然と知識を増やせと言われても、むずかしいですよね。私がよく言うのは、まずは各ジャンルの王道のものに関する知識から得ていくと良いですよ、ということ。王道は、定番と言い換えてもいいかもしれません。センスの良いもの=流行のもの、と勘違いしがちなのですが、流行っているものは、変化球だから面白がられていることも多いのです。定番をわかった上で、流行のものに触れると、系統立てて理解でき、効率よく知識を増やしていくことができます。
「センス」という名の”呪縛”を”武器”に変えるには? / wisdom.nec.com
例えば、「あいうえお」しか知らない人間と51音知っている人間とでは、どちらがセンスの良い文章を書けるでしょうか?答えは明確であると同時に、知識の量が良い文章を書くカギになっていることが分かりますよね。
極論の問ではあるんすが、ではもう一つ質問です。いままでの自分がした失敗を思い返してみましょう。例えば
- 友人との会話でセンスの良い返しができなかった理由は?
- プレゼンの場でうまいこと話せなかった理由は?
答えは「知識が足りなかったから」です。
デザインの業務も同じです。いつもガタガタのデザインになってしまうのは、デザインのルールや文法の知識が少ないからです。
何もない状態からのひらめきがセンスだと思っていないでしょうか?考えても考えてもデザイン案が浮かんでこない。「私ってセンスないのかもしれない」と考えていませんか?
センスがないと落ち込む前に、まずは「センスとはなんぞや」ということを理解していきましょう。
※個人的に、水野学さんの以下の本は「センスの理解を深める」上でかなり勉強になりました。ご参考までに。
【解説③】デザイナーは職人であることを理解する
例えば、アーティスト(作家)はその人の作風に惹かれた人から作品を依頼されるのに対し、デザイナー(職人)は「お客様ありき」でお客様のニーズの中で作品を提案をします。
このことから分かるように、私達デザイナーは「こういうものが作りたい!」と考えるのではなく、「こういうものを作れば、ひとは喜ぶかもしれない」というアプローチから考える必要があるのです。
もちろん、作りたいものを作るな!とは言いません。自分の中の作家性は、デザイナーの業務とは別に思いっきり表現するべきです。
そうすることで、自分の作品を観てくれる人やフィードバックをくれる人、はたまたこんなイラストを描いてほしい!という依頼が次第に現れるかもしれません。
終わりに
私は当時「デザイナーには個性が必要だ」と強く思っていました。思い返してみると、それは間違いだったことに気が付きます。
私はこの理由の説明に、よく「アートとデザインの違い」の話を持ち出します。それは以下のようなものです
この言葉に、おおよその理由が入っています。
そういうことを知ってから、デザインすることがグッと楽しくなりました。
もちろん、自分が思うかっこいいデザインを突き詰めることも好きです。仕事とは別に、平行してやっていくべきだと思ってます。
私の話ですが、普段のお仕事ではこんなような成果物(ポートフォリオサイト)を作りつつ、趣味でこんなアートワークを描いています。前者は職人的業務で、後者は作家的業務と明確に分けて活動しているんです。
作家的活動はお金にはなりませんが、楽しいので作り続けています。ただ作り続けていると、時々「お仕事」としてこんな風にアートワークを描いてほしいとの依頼がきたりします。
そういう経験もあったりするので、自信の作家性や創造力はどんどん発揮し、デザインの仕事とは別の形で発表していくべきだと考えています。
デザイナーはお客様ありきのお仕事です。であるならば、そのお客様のニーズの中でのベストを目指すべきです。「自分が思うかっこよさ」を目指すのはここでは避けましょう。
※また、過去に「デザイナーの仕事がつらい」に関連した以下のような記事も書いてますので、合わせてチェックしてくれると嬉しいです。